欧州の夏と言えば、日本の高温多湿とは異なり、気温もそこまで上がらず、カラッとした気候が長らく定番でした。
特にナントは海洋性気候。大西洋からの冷たい空気が流れ込んで、夏は快適そのものです。最低気温17℃/最高気温27℃が典型的な夏の一日で、誤差はそれぞれ+/-3℃くらいのイメージです。
2025年は8月の中旬に一週間ほど、熱波があり、これが10年に一度の熱波だといわれていました。
ところが2026年はその10年に一度級の熱波が1か月に一度来ました。
5月下旬に来た最初の熱波は、フランスでは異例の速さで、ナントでは37℃まで気温が上がりました。前の週までは最高気温が20℃くらいだったこともあり、気温差に体がついていかずかなりしんどかったです。
6月の中旬にあった2回目の熱波が一番強烈でした。最高気温は42.2℃までいき、最低気温も28℃程度でした。因みに、フランス基準の熱帯夜(nuits tropicales)は20℃以上のことを言いますので、相当な酷暑でした。
2回目の熱波が終わり、ようやく外で活動できる程度の気温になったと思ったのも束の間、7月の上旬に3回目の熱波が来ました。最高気温は2回目ほどではなかったものの、38℃程度の日がずるずると続きました。
4回目の熱波として7月末に2日ほど38℃程度の日がありましたが、これは長続きはせず胸をなでおろしました。
もうここで何回目か数えるのかは止め、その後ちょこちょこと35℃を越える日あるたびにうんざりしています。
熱波はフランス語でCanicule。Bonjourより多く耳にしたので、さすがに覚えました。
街では、流行語遊びなのか、カニキュ~ル~と節をつけて繰り返している子ども達をよく見ました。
この熱波期間、ナントでは特別施策として、美術館の無料開放(行くまでが暑い)や、プールの無料開放、公園の24時間オープンなどがなされました。市長がSNSで得意げにアピールしていましたが、効果があるのかよく分かりません。
又、マルシェの中止やごみ収集の一部停止など生活インフラにも影響がありました。学校や学童的な施設も午後休になるなど、子どもがいる家庭は更に大変そうでした。
フランス全体のニュースとして、自宅で亡くなる人の数の増加や、涼を求めての溺死者、農作物への影響が連日報道されていました。我が家の近所の公園も、芝生がすっかり枯れてしまっていました。野菜の価格高騰なども既にちらほら影響が出てきているようです。
又、この期間はバスやトラムなどの公共交通機関に乗ったが最後、車内の異常な暑さに皆がげんなりとしていました。空調がついていない車両がほとんどだからです。パリではバスの運転手が意識を失い、街路樹に衝突する事故も起きました。バス車内の体感気温は50℃を越えていたそうで、労働環境の改善を求める事態となりました。
又、脱水対策として、アルコール飲料の販売停止措置などもありました。長い歴史の中で常に日光不足により心身の健康をやられてきた欧州人。基本的に日を浴びることは良いことだと認識している人が多いようで、危機感のない人は変わらずテラス席でアペロを楽しんでいたので、アルコール停止は賢明な措置だったと思います。
又、ガロンヌ川沿いで複数の原子力発電所の炉停止がありました。原子力発電所は冷却水を河川に放出しており、河川の水温には生態系維持の観点から上限が設けられています。今回、熱波により河川の水温が急上昇し、発電所からの排熱を受け入れられない状況であったために、停止措置が取られました。その後大きな問題には波及しなかったものの、欧州の電力輸出国であるフランスでこのような問題があると、欧州全体でエネルギー危機とインフレになりかねない事象でした。
又、ボルドーでは熱波による乾燥の影響を受けての大規模森林火災が起きています。春の雨で例年以上に育った樹木が、猛暑により極度に乾燥したことが原因です。2万人以上が避難を余儀なくされました。バカンスシーズンでボルドーを訪れていた人・行く予定だった人も多く、交通網含めて混乱がありました。昼間でも煙で辺りが暗い映像が連日報道されていました。
これほどまで人的被害が広がっている背景には、さんざん言われていることですが、エアコン不足があります。
フランスのエアコン普及率は約25%らしいです。分母が世帯なのか何なのかよく分からない統計値ですが。国内の南北でも差があると思われ、私のナントでの体感値は5%です。ナントに引っ越してきたときに、条件に合うアパートの部屋をオンラインで20戸程度、内見で5戸程度見ましたが、当然のようにどこにもエアコンはついていませんでした。
私が今住んでいるアパートに固定式のエアコンを設置する場合、まず大家の同意を取り付け(これが無理)、管理組合の承認を得て(建物全体の工事になるので。これに1年くらいかかりそう。)、ナント市に届け出をして(室外機設置による外観影響の審査。これは3か月くらいで回答が来るか。)、そして有資格者に施工の依頼をします。
一軒家の場合はもっと楽なのでしょうが、やたら古い土塗り・石壁の家屋が多いので、そもそも工事が可能なのかという、新たな問題が発生しそうです。
固定式エアコンの設置が無理筋なため、モバイル式のエアコン需要が急増しました。空気清浄機みたいな見た目の機械から太い蛇腹チューブが延びて、窓から暖気を排出する、室外機要らずのタイプです。窓を開けるので、うまい具合にあいたスペースを埋めないと、結局外から熱気がどんどん入ってくるのですが、無いよりはマシとされています。
突然の需要急増に供給が追い付くはずもなく、店頭は勿論、ネットショッピングでもほとんどすべて、次回入荷予定未定という有様です。
そんな中、フランスの大手ディスカウントストアLIDLが7月1日に全国で20万台のモバイル式エアコンを販売することを発表すると、当日は開店と同時に人がなだれ込み、暴動・流血・催涙ガス噴射と、各地で警察沙汰になっていました。
ちなみに、ナントでは現在、大学病院を新設中で、完成次第今の建屋から引っ越しをするそうです。この新建屋には(にも)、環境配慮の理由でエアコンが設置されていないらしく、全国ニュースでスキャンダルになっていました。この世論だと、さすがに今からでもエアコンが設置されるのでは、、と思っていますが、どうなのでしょう。室温45℃の病室や手術室など、誰も入りたくありません。
最後に、エアコン不足と共に、日の長さも猛暑の辛さを高めています。
夏のナントは日没が22時過ぎ。真っ暗になるのは23時を過ぎてからです。カフェのテラス席で友人と飲み明かすナイトライフには持ってこいなのですが、熱波期間はそうもいきません。
一日の最高気温は18時にやってきて、カンカン照りの晴れの中晩御飯を頂き、そこから気温が下がらないまま夜寝る時間に突入するので、非常に気が滅入ります。
今年の夏で暫定一番しんどかった瞬間は、ある日の夕食中に停電・断水になった時です。高温影響で各地の変圧器でトラブルが頻発し、送電網に支障をきたしていました。この停電は結局15分くらいで復旧したのですが、エアコンなし40℃をなんとか扇風機で凌いでいたのに、その扇風機すら使えない状態がいつまで続くか分からないあの時間は最悪でした。又、フランスのマンションでは各世帯ごとに冷水/温水のタンクがあり、そこから生活用水が供給されます。今回、電気が停まるとそのタンクも使えなくなるということを学びました。水の買い置きがない隣人は慌ててどこかに水を買いに行っていました。地下ガレージの車に避難してそこでエアコンにあたるか、、などと思案していたら不意に電気が復旧し、なんとか事なきを得ました。
さて、明日からの8月第2週も35度を超える日が2-3日続く予報です。我が家はついにモバイル式エアコンを入手!彼のデビュー戦となりますので、是非とも実力を証明して欲しいものです。

涼しかった週末にPlage du Portmainへピクニックに。干潮。